自宅の電気を再エネに!電力会社切り替えで始める市民参加型プロジェクト
再生可能エネルギーに関心があるものの、太陽光発電パネルの設置は難しい、具体的な行動が分からないと感じている方も少なくないかもしれません。そのような方にとって、自宅の電気を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることは、手軽に始められる有効な市民参加型プロジェクトの一つです。この方法は、環境への貢献に加えて、新たな電力プランの発見にもつながります。
再生可能エネルギー電力とは何か
私たちが日々使う電気は、様々な方法で発電されています。その中でも再生可能エネルギー(再エネ)は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった枯渇しない自然の恵みを利用して発電される電気です。これらは発電時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスをほとんど排出しないため、環境負荷が低いという大きな特徴があります。
現在、多くの電力会社が再生可能エネルギー由来の電気を供給するプランを提供しています。これらのプランには、主に以下の方法で再エネ電力が供給されています。
- FIT(固定価格買取制度)電気の活用: FITとは、再生可能エネルギーで発電された電気を、国が定めた固定価格で一定期間買い取る制度です。これにより、再エネ発電事業者は安定した収入を得られ、再エネの普及が促進されてきました。このFIT制度で買い取られた電気の一部を、小売電気事業者が調達し、皆様に供給しています。
- 非FIT電源の活用: FIT制度を通さずに自社で発電した再エネ電力や、既存の水力発電所などから調達する電力です。これらは「非FIT電源」と呼ばれ、より直接的な再エネ活用と言えます。
- トラッキング付非FIT証書の活用: 再エネ発電に由来する環境価値(CO2排出削減効果など)を証書化したものです。この証書を組み合わせることで、実質的に再エネ電力の供給を実現します。
これらの方法によって、ご家庭で使われる電気が実質的に再生可能エネルギーに由来していると見なされる仕組みが整っています。
電力会社を切り替える具体的な方法
自宅の電気を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるプロセスは、想像よりも簡単です。多くの場合、特別な工事は不要で、Webサイトからの申し込みで完結します。
- 情報収集と比較検討:
- まずは、再生可能エネルギー電力の供給を積極的に行っている小売電気事業者を検索します。各社のWebサイトで、提供されている料金プラン、電源構成(どのような種類の再エネを供給しているか)、料金シミュレーションなどを確認しましょう。
- 比較サイトなどを活用するのも有効な手段です。ご自身の電気使用量やライフスタイルに合ったプランを見つけることが重要です。
- 必要な情報の準備:
- 現在ご契約中の電力会社の「検針票」や「Web明細」を用意します。ここには、お客様番号や供給地点特定番号など、切り替えに必要な情報が記載されています。
- 一般的に、スマートメーターが設置されていない場合は、電力会社の切り替え時に設置が必要になりますが、この費用は原則としてかかりません。スマートメーターは、電力使用量をデジタルで計測し、遠隔でデータを送信できる機器です。
- 申し込み:
- 切り替えたい小売電気事業者のWebサイトから申し込みを行います。先ほど準備した情報(お客様番号、供給地点特定番号など)を入力し、希望のプランを選択します。
- 手続き自体は、新しい電力会社が現在の電力会社との間で調整を進めてくれるため、ご自身で現在の電力会社に解約の連絡をする必要はほとんどありません。
- 切り替え完了:
- 申し込みから通常2週間〜1ヶ月程度で切り替えが完了します。電力の供給はこれまで通り行われるため、停電することなくスムーズに移行できます。
再エネ電力に切り替えるメリット・デメリット
再生可能エネルギー電力への切り替えは、環境への貢献だけでなく、ご自身の生活にもいくつかの影響をもたらします。メリットとデメリットを理解し、総合的に判断することが大切です。
メリット
- 環境貢献への直接的な参加: ご自宅で使う電気が再エネになることで、温室効果ガスの排出削減に貢献できます。これは、地球温暖化対策への具体的な一歩となります。
- 企業の再エネ推進を後押し: 再エネ電力への需要が高まることで、電力会社や発電事業者はより多くの再エネ電源を開発・導入するインセンティブを得られます。
- 多様なプランからの選択肢: 再生可能エネルギーを主軸とする電力会社は、単に環境に良いだけでなく、特定のライフスタイルに合わせたユニークな料金プランやサービスを提供している場合があります。例えば、特定の時間帯に電気料金が安くなるプランや、地域と連携したサービスなどです。
- 企業のイメージ向上: 再生可能エネルギー電力を使用していることを示すことは、環境意識の高い企業や家庭としてのイメージ向上にもつながります。
デメリットと考慮すべき点
- 料金水準の変動: 一般的に、再エネ電力は既存の電力料金と比較して割高になる傾向があるというイメージがあるかもしれません。しかし、競争の激化や再エネ発電コストの低減により、現在では既存の大手電力会社と遜色ない、あるいはそれよりも安い料金プランを提供しているケースも増えています。ただし、電源構成や提供会社によって料金水準は異なるため、必ず比較検討が必要です。
- 選択肢の多さからくる迷い: 多数の小売電気事業者が存在するため、どの会社を選べばよいか迷ってしまう可能性があります。ご自身の優先順位(料金、環境性、サービス内容など)を明確にすることが、最適な選択に繋がります。
- 供給の安定性に関する誤解: 「再エネは天候に左右されるから不安定」という懸念を持つ方もいますが、電力の安定供給は国の送配電網全体で管理されており、どの電力会社を選んでも、ご家庭に届く電気の品質や安定性が変わることはありません。
自分に合った再エネ電力会社の選び方
多数の選択肢の中から、ご自身に最適な再生可能エネルギー電力会社を選ぶためには、以下のポイントに注目すると良いでしょう。
- 電気料金とプラン: 最も気になる点の一つが料金です。ご家庭の電気使用量に合わせたシミュレーションを行い、年間でどの程度の費用になるのかを確認しましょう。基本料金、従量料金、再エネ賦課金(すべての電力会社で共通)だけでなく、燃料費調整額の上限の有無なども確認が必要です。
- 電源構成と環境へのこだわり: 「CO2排出ゼロ」を掲げているか、どのような種類の再生可能エネルギー(太陽光、風力など)を主に利用しているか、再エネ比率はどのくらいかなど、環境性へのこだわりを比較しましょう。
- 付帯サービスや地域の取り組み: 地域産再エネの利用を促進するプランや、電気料金の一部が地域の環境活動に寄付されるプランなど、電力会社によっては独自のサービスを提供しています。ご自身の関心や価値観に合うサービスがあるか確認してみるのも良いでしょう。
- 企業の信頼性とサポート体制: 新しい電力会社を選ぶ際には、企業の運営実績や顧客サポート体制も重要な判断材料です。困ったときに相談できる窓口がしっかりしているか、口コミや評判などを調べてみるのも参考になります。
まとめ
自宅の電気を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることは、専門知識がなくても手軽に始められる、非常に実践的な市民参加型プロジェクトです。この選択は、地球環境への貢献に直結し、持続可能な社会の実現に向けて大きな一歩となります。
多様な電力プランの中から、ご自身のライフスタイルや価値観に合ったものを選び、環境に優しい生活を始めてみませんか。まずは、ご家庭の電気の検針票を手に取り、再生可能エネルギーを提供している電力会社のWebサイトを覗いてみることから始めてみましょう。